まだまだ暑さが続く中、この1週間いかがお過ごしでらっしゃいましたか。
幾分、夕方に風が出てきて少しホットするような・・・。
さて、前回から始めました 【ピアノのつぶやき】
小さな海辺の町の会員制クラブに置かれたグランドピアノが
色々な人間模様を語るという物語。
今回はいよいよ新人ピアニストが初めてクラブの中で生演奏をするところからです。
ではお楽しみ下さい。
ピアノのつぶやき
第2話
その女性はブルーのワンピースにブルーのアイシャドー。
(一応、小麦色の肌に似合うということにしておきましょう。。。)
土曜日の夜 時間は8時
お客様も70人くらいはいるでしょうか。9時近くになるといつも満席状態。
さていよいよ彼女の演奏が始まります。
彼女大丈夫かなぁ?なんだか指が震えているし
心臓の鼓動が200はいっちゃってるんじゃないの?
あっ・・・右手の親指が私に触ろうとしてるけど、ちがう ちがう!
この曲は左の小指からイントロが始まるんだよ!
♪ ~ ♪ ♪ ~
フゥ~・・・大丈夫だった・・・左手から始まった。
そうそう、その調子で落ち着いて弾いてネ。
『シェルブールの雨傘』はスローテンポな曲だから。
・・・・でも、今日は雨降ってないよネ。 まっ、いいか。
お客様も今日はあの大手のT会社の社長や
土曜日には必ずおみえになるR会社の社長。
そうそう、珍しくK会社の社長もおみえになってる。
彼は新人ピアニストが来ると品定めをするかの様に必ずステージ近くに座って
演奏を聴くというより顔を見に来るんです。
そのピアニストを気に入れば必ずチップを渡して下さるのだけど
そのチップの渡し方が・・・・・
それは後で話しますね。
果たして彼女はこの社長に気に入ってもらえるかな?
あ、1曲が終わった。
ここで拍手があっても頭を下げててはダメだよ。
そのまま続けて2曲目を弾くんだよ。
それがこの世界でのルールでマナーだから・・・・
あ~ぁ、立っちゃったよ頭を下げちゃったよ。しかも立っちゃった・・・
こりゃダメだ。
おまけに満面の笑みまで浮かべちゃったよ・・・。
もういいから早く椅子に座って2曲目を弾いてよ。
黒のグランドピアノの私まで恥ずかしくて赤面しそうだよ。
あ~なんとか5曲弾いて第1ステージが終わったネ。
そのまま静かに退席してね、頭も下げなくていいから。
そうそう、その調子でそのまま静かに左のカーテンの中へ消えるんだよ。
こうして彼女は8時からの30分のステージを終了し、
休憩後、9時からの第2ステージにまた姿を現すのです。
~・~・~・~・~・~ 一口メモ ~・~・~・~・~・~・
食事やお酒の場での生演奏はBGMとほぼ同じで
食事の味やお酒での会話の邪魔をしてはいけない
ルールがあります。
私が思うのは、グランドピアノが花瓶ならば
演奏するピアニストは一輪の花
そして流れる曲は花からの淡い香り・・・
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
この第1ステージ終了直後に、サブマネージャーが彼女の休憩室へ行って
「ステージを去る時はツンとあごを上げて歩かない!!
もっと普通に前を向いて肩をおとして歩くように!!」
この一言がブルーのアイシャドーの彼女の心に『逆襲の火』をつけてしまったことは
言うまでもありません。
それでは、また次回をお楽しみに!!